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危機に陥っている伝統工芸を、科学の力で守ろうとする話

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SEOマーケティングの未来を読む~クレアネット通信vol.113
 『危機に陥っている伝統工芸を、科学の力で守ろうとする話』

【1】インターン企画のオセロゲームが完成

今年もHALの学生さんがインターンでやってきてこの先月10月、1ヶ月ずっと一緒に仕事をしたりご飯を食べたり飲みに行ったりなど学んでもらいました。
学生さんの本分は勉強、一生学ぶことが大事など言いながら、 1ヶ月あるんだから企画を作って世界を轟かそうということでゲーム企画を考えて作ってもらいました。
内容や仕様など学生の谷田くんと川野くん主体で ちょっとサポートでうちのスタッフが参加した程度。
何もないところから作り出す歓び、というのがうちの仕事の 本当に楽しいところで、自分の指で自分の頭で世界に人々に 感動や楽しみを伝えて喜びを広げることができるんです。
ゲームだったり、ウェブだったり。
そんなことで、このインターン企画完成しましたので ぜひみなさま、デスクトップにダウンロードのうえ解凍、 「Othello.exe」をクリック、とちょっとだけ手間ですが、 クリック3回ほどぽちぽちで楽しめます。
「オセロゲームが完成」
http://www.clarenet.co.jp/products/character.html

【2】WEBマーケティング4コマ漫画

■ 第123話 パイレーツアップデート

■ 第122話 もうすぐハロウィン

【3】危機に陥っている伝統工芸を、科学の力で守ろうとする話

もうすぐ紅葉のシーズン、京都の嵐山の紅葉が今年も待っています。
秋深し、隣は何を、する人ぞ。

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工芸品
京都には「これぞ日本!」と世界に誇りたくなるような「匠の技」と言える伝統工芸が数多く存在しています。
京蒔絵や京瓦、京壁、京扇子、京人形、京提灯、京指物、京和菓子など。
これらは、日本人は手先が器用だという世界共通のイメージの一因にもなっています。
しかし今、その京都の伝統工芸の匠の技を受け継ぐ後継者の不足が深刻化しています。
そんな中で「匠の技を科学的に解析する」というプロジェクトが注目されています。
それは、習得に長い年月がかかる京都の職人の技術を、科学の力で解析・数値化し、マニュアル化し公表することで、京職人の後継者育成を目指すというものです。
匠の技を科学の力で解明する。
興味がわきませんか?
今回はこの伝統工芸と科学の話をしてみたいと思います。

■歴史的にも文化的にも重要な京都

話を進める前に、まず京都という地域の持つ伝統と文化について。
京都は794年に日本の首都に定められ、 当時は日本の政治・文化の中心地でした。
当然、宮廷・幕府・寺社仏閣・古典芸能などが存在し、 京都の伝統産業は、彼らからの高い要求に応え続けることで牽引され発展していきました。
より良い物を求める顧客の存在が、より良いものを作り続けようとする職人の原動力になり、京都の 伝統工芸の創造性を引き出してきました。
こうした職人たちの挑戦や技術の革新という歴史を 1200年間繰り返してきたことで、京都は伝統工芸を 担う高い技術力を持つ職人を数多く生み出し、同時に京都の伝統工芸は京都にとって欠かすことのできない産業となったのです。
また、京都の伝統工芸は産業の枠だけに留まりませんでした。
京都の伝統工芸はいつしか日本人のアイデンティティ に根ざすほどの文化的にも高い価値を有するものになり、その結果、京都は我々日本人にとって特別な歴史・ 文化都市となったのです。
しかし、1200年以上に渡って受け継がれてきた、 世界に誇る日本の財産であり、京都を京都たらしめて いるその伝統工芸や匠の技が、いま危機に 陥っているのです。

■伝統工芸の危機その1 縮小する産業規模

日本経済の成長とともに劇的に成長してきた 伝統産業の規模は、高度経済成長期後半以降、 拡大することはなく、今日まで縮小し続けています。
業界によって違いはあるものの、1970年代から 90年代はじめをピークに、生産額・企業数・ 従事者数の全てが激しく減少し、産業として危惧される事態にまで陥っています。

■伝統工芸の危機その2 時間のかかる後継者の育成

「師匠の背中を見て覚える」と言われる伝統 工芸の職人の世界。
完全に匠の技を身に着け一人前になるには少なくとも10年以上の修行が必要と言われています。
匠の技を習得するまでの期間が長いことが、伝統工芸 の後継者不足の要因の一つになっています。
後継者が育たずに廃業してしまう工房も増えて いるそうです。
後継者が育たなければ、技術が受け継がれることもなく、 高い技術力を誇る日本の伝統工芸は失われてしまうかもしれません。

■職人を目指す若者たちは増えているのに……

伝統工芸が後継者不足に悩んでいるのは事実ですが、その反面、伝統工芸の職人を希望する若者自体は 増加傾向にあるそうです。
「きつい仕事」というイメージを持ち職人の世界を 敬遠している若者が多いと思っていましたが、そうでもないのですね。
ちょっと意外でした。
職人を希望する若者が増えている理由は2つ。
大企業でも倒産する世の中だからこそ、手に職をつけ、 独立を希望する若者が増えてきていることがまず一つ。
もう一つは、自分らしい生き方を求め、自己実現や 自己表現のために、創作活動に興味を持つ若者たちの 中から伝統工芸に関心を持つものが多く現れていること。
しかし、せっかく伝統工芸の基礎技術を学んでも、京都において伝統工芸における若者の就職口は少なく、 それを伸ばしていける環境がないそうです。
また、職人として成長するためには、仕事の経験を積み技術を向上させ続ける必要がありますが、 それには膨大な時間がかかるのです。
そのため、伝統工芸の職人の世界はますます高齢化が進み、若者への技術の継承が困難になっているのです。

■匠の技を解明する!?京都工芸繊維大学教授・濱田泰以さんのプロジェクト

こうした現状の中、京都の伝統工芸の後継者不足の 解消のために、京都工芸繊維大学教授・濱田泰以さん がとても興味深いプロジェクトに取り組んでいます。
長年の修行のすえに習得する匠の技とはいったいどんな ものなのかを、スポーツの動作を解析するために使われ る科学的手法を用いて解明し、師匠本人も気づいていな かった「コツ」や「カン」といったものをデータ化するんです。
職人の技術にどんな法則性があるのかをマニュアル化することで、匠の技の習得時間を短縮させ、 後継者不足を解消しようという内容です。

■京蒔絵師の匠の技を解明しようとした濱田教授

「京蒔絵」というものを知っていますか?
京の伝統工芸の花形で、漆器の表面に漆を塗り、それが乾かないうちに金や銀などの粉を蒔くことで絵や文字を描く技法です。
京蒔絵の基本中の基本は漆塗りです。
刷毛で漆を塗る技術には、漆の厚みを均一に塗ること、素早くゴミを掬い取りながら塗ること、刷毛目が残らないように塗ること、漆の硬さによって刷毛の 角度を調節しながら塗ることが必要で、これらを 修得するだけでも10年の修業が必要とされています。
濱田教授は、京蒔絵師の名工であり師匠でもある下出祐太郎さんの漆塗りの技と、弟子のそれとを比較し、解析しました。
動きを計測するために、
「赤外線マーカーを体に装着」
「赤外線カメラ5台で360度から撮りデータ化」
「眼球運動測定機器で眼球の動きを測定」
「スーパーカメラで刷毛の角度をとらえる」
といった科学的な方法が取られました。

■科学的な解析で師匠と弟子の違いが明らかに

解析の結果、漆を塗る板の位置が師匠と弟子で違っていました。 また「左ワキの開く角度」「集中力」「視線の動き」 などにも違いが見られました。
弟子の脇の開き13度に対し、師匠の脇の開きは9度。
脇をしめて塗ることで、師匠は締め板を安定させていたのです。
そして集中力の違い。
集中力はまばたきによって表わされます。
弟子のまばたきの回数は「6分間で135回」でした。
それに対し、師匠のまばたきの回数は「6分間で19回」 だったそうです。
驚くほど違いますね。
そして、漆を塗るときの視線の動き。
弟子の視線は上下左右動きまわり、不安定でした。
師匠のそれは、塗る刷毛と同じ方向に視線が動き、 安定していたそうです。
面白いことに、師匠も意識せずにやっていたそうです。
師匠本人が気づかないことは、弟子にも伝えようが ありません。
こうした無意識のコツは、弟子たちが師匠の背中を 見ながら長い間修行し続けることでのみ、身に付けることができたのでしょう。

■解析の結果、たった一週間で漆塗りの技術も向上!?

解析前の漆塗りと、この解析の結果を踏まえながら 修行した後を比べると、たった一週間にも関わらず、 明らかに弟子の漆塗りの出来栄えが良くなり、技術が向上したことがわかったそうです。
科学のサポートによって、若い弟子にも師匠のコツを伝えることが可能だということと、匠の技を科学的に解明するこのプロジェクトに大きな意義があるということが、証明されたのです。
濱田教授は、京職人の後継者不足の解消のために、 伝統工芸の技術を若い人にできるだけ早く身につけ 一人前になってもらうと、データを公表し後継者の 育成の手助けをしているそうです。

■科学的手法で暗黙知をデータ化

暗黙知(あんもくち)という言葉があります。
言葉や図によって表現したり説明したりできる 形式知(けいしきち)に対し、主観的で言葉に 表せない、したがって説明もできない知識を指す言葉が暗黙知です。
伝統工芸の職人の世界における「師匠の背中を見て覚える」 という言葉は、この暗黙知を獲得する難しさや 手段を言ったものです。
濱田教授のプロジェクトは、この「暗黙知」を 科学の力で分析し、客観的に目に見えるように データ化することで「形式知」とし、師匠から 弟子に伝えやすくなるようにしたものと言い換えることもできます。
「暗黙知」を「形式知」とすることで、これまで10年 以上かかった修業期間を短縮できるようにもなるでしょう。
京都の伝統工芸の後継者不足を解消するだけでなく、 もっと新しい、高品質な製品をつくる可能性も生ま れるかもしれません。

■まとめ
変えないことによって守られ受け継がれていく技術もあるでしょう。
しかし同時に、創造性を発揮し大きく変わることが、技術を守り受け継がれることに繋がる場合もあるはずです。
後継者不足を解消するために、伝統工芸とは相容れ ないように見える科学の力をもって、弟子に師匠のコツを伝えようとした濱田教授のプロジェクトもその 一つだと思います。
伝統工芸も産業であり経済活動の一つである以上、 他の事業と同じく、自己を変革させ続けることが、 危機を乗り越え、新たな未来を切り開くことに繋がる のだと思います。
最後に感想をもう一つ。
1200年を超える歴史を持つ京都は、日本文化を代表 するものであり、日本人のアイデンティティの原点です。
日本という国を国際社会によりよくアピールすること のできる、魅力的で重要な都市です。
そういう意味でも、京都を支えてきた伝統工芸を守り 伝えていくことは、文化的にも国家的にも重要で特別 な意味を持っていると思います。
こういった取り組みが行われていることを日本人と してとても嬉しく思いました。
記載:クレアネット谷

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(次回につづく)

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