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シャープの業績回復~鴻海精密工業の信賞必罰

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『SEOマーケティングの未来を読む vol.167』
「シャープの業績回復~鴻海精密工業の信賞必罰」

【1】福島のJヴィレッジに行ってきました

サッカーしている人はサッカーファミリー。

ということで、Jヴィレッジ復興プロジェクト寄付金、
Jヴィレッジ復興プロジェクトに微力ながら参加しました。

Jヴィレッジ復興プロジェクトに微力ながら参加

ピーチで1時間半、仙台空港からクルマで1時間で福島に行き、
サッカーのJヴィレッジに行ってきました。

まだJヴィレッジは復興中で、福島現地の雰囲気や感触は
テレビやメディアとまた異なる話で・・。

仕事や生きることについて真剣に学ぶ機会になりました。

サッカーを通じて少しでも復興に貢献する。
仕事をする意義がまた1つ増えました。

詳細はこちらをお読みください。

福島研修~原発周辺震災状況を見て



【2】 WEBマーケティング4コマ漫画 毎週金曜日更新

■ 第278話
ユーザーインターフェース
続きはWebで!とか、実は人間の心理を得た広告だったようです。

■ 第271話
相手の名前
名は体を表すといいますが、名前は強いキャッチコピーになるようです。

■ 276話
CPM200円
専門用語CPMを知れば、メディアのいろんなものが見える!?

 

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【3】シャープの業績回復~鴻海精密工業の信賞必罰

シャープが復活、という記事をみました。

大阪に住むものとしてシャープは身近に存在してる会社でして、ツイッターを日々みているものとしても非常に気にかかっていた、日本を代表する企業であるシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)に買収され傘下企業となり、現在どうなったのかの話です。

シャープと鴻海は、2016年4月に鴻海がシャープに出資し買収する契約を結び、6月末までに4000億円ほどの出資金の払い込み完了を目指していました。

そして鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)会長は

「シャープの従業員に全員残ってもらえるよう最善を尽くしたい」と語っており、その流れは知ってのとおりです。

今回のメルマガは買収劇をもう一度振り返りつつ、新しい動きを取り上げてみたいと思います。

 

買収されたシャープと買収した鴻海の郭台銘会長

「ターンテーブルレンジ」「液晶表示電卓」「電子システム手帳」など数々のユニークな業界初・世界初の商品を数多く世に送り出してきた日本を代表する総合家電メーカーの1つシャープ。

1日16時間働く超ワンマンで
「現代のチンギス・ハーン」と呼ばれている郭台銘会長率いるスマートフォンのディスプレイなどを受注する台湾の最大手鴻海の傘下に入ることを発表し、正式に契約を結びました。

日本の大手電機メーカーのシャープが、アジア資本の企業に4000億円弱で買収され、初めて外資によって傘下に収められてしまったのです。

2008年のリーマンショック前までシャープは液晶分野で世界のトップを走っていました。

そのシャープが10年足らずで海外企業の傘下に入ることになったこの買収劇は、アジアの新興勢力との競争で窮地に追いやられた日本企業の象徴のようにも見られています。



 

荒れていた買収劇……減らされた出資額

当初、ホンハイはシャープへの出資額を4890億円と予定していましたが、最終的には約1000億円減額の3888億円となります。

シャープが鴻海の買収提案を受け入れ傘下入りを決定する直前に、シャープが鴻海に渡したリストから「3500億円に上る財務上の潜在的なリスク」が問題化。

シャープから説明を受けたみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行などの関係者から言わせると、「発生可能性が低いものも多く、巨額の隠れ債務発覚ではない」というものでしたが、鴻海の郭台銘会長は「契約直前での開示は信義破りだ」と激怒し契約の延期と条件の見直しを行います。

その結果、出資額が減額されたのです。

 

手に入れたいのはシャープの液晶技術力だけ……鴻海の思惑

そもそも、鴻海はなぜシャープを買収したのでしょうか?

今回の買収交渉を取材し続けてきたジャーナリストはこのように語っています。

「契約条件にある経営陣留任、従業員の雇用維持はリップサービスに過ぎない」
「鴻海が手に入れたいのはシャープの液晶技術力だけだ」

 

シャープの液晶技術力を狙っている?……気になる条項

契約では鴻海からシャープへの出資の払込期間は6月28日から10月5日ですが、契約内容にこのような条項があるのです。

「シャープの事情で契約が終了した場合や、鴻海に責任がない事情が原因で今年10月5日までに出資が実行されない場合、シャープは鴻海にディスプレイ事業を購入する権利を与える」

買収交渉を取材し続けてきたジャーナリストでなくても、これは気になります。
まるで液晶技術力を虎視眈々と狙う鴻海の思惑がにじみ出ているようです。
業績悪化や株価を口実に鴻海が出資しなければ、鴻海はディスプレイ事業のみ買収することも可能なのです。

 

シャープが経営難に陥った原因も液晶だった?

シャープの経営がこうまで悪化し巨額の赤字を抱えてしまった最も大きな原因は、
売上高の約3分の1を占める主力のテレビや液晶事業の不振だと言われています。

2013年3月期に5453億円という巨額の最終赤字を計上、2014年は115億円の黒字決算となるも、2015年3月期には2223億円の最終赤字を計上していました。

液晶事業はシャープにとってお荷物という見方もできるわけで、鴻海が買い取ってくれることをポジティブに捉える者もいました。

液晶部門を切り捨て、他の部門に経営と資金を集中させることができれば、往年のような目覚しい商品を生み出すことができるのではないか、と。

 

怒りの声が続出したシャープの株主総会

鴻海による出資や買収案が承認された、大阪市内で開かれたシャープの定時株主総会は、過去最長だった昨年と同じ3時間23分もあったそうです。

「株主の期待に応えられず誠に申し訳ない。深くおわび申し上げる」
「厳しい業績、4年間無配当となったことは誠に申し訳なく、おわび申し上げます」
「鴻海との戦略提携で再生と成長に向けた取り組みを加速させる」

とシャープの高橋興三社長は起立した役員全員と共に冒頭で陳謝し理解を求めたそうですが、

「なぜこんなに赤字が続いているのか」
「経営能力がゼロだ」
「毎年何千億も赤字出すなんて、大阪の商売人のやることではない」

と総会では株主から怒りの声や疑問が続出し、鴻海による買収に関する疑問も多かったそうです。

 

株主総会で噴出した鴻海への不審

鴻海からの出資額が大幅に減額されたことや傘下入りが決定した経緯、そしてやはり「シャープ側に何らかの問題が発生して出資が実現しなかった場合、シャープは鴻海にディスプレイ事業を購入する権利を与える」という条項に対し、株主から疑問や鋭い質問が投げかけられたようです。

わかりやすく株主からの質問をQ、高橋興三社長や橋本仁宏取締役の答えをA、で抜粋してみます。

Q「シャープの業績を理由に鴻海が出資を止めるといってくるのではないか」
A「この条項は、シャープが提携をやめたいときのほか、巨大災害で工場がつぶれるなど、
不可抗力で契約を履行できないときでそういう事態は全然想定していない」

Q「すでに水面下で銀行、鴻海、シャープで売却の話ができているのでは」
A「それはない」
(この後「話がないなら条項を削除してください」と株主は詰め寄ったそうです)

Q「シャープが飲めない条件を押し付けられれば出資が止まる、売却に向けた話はかなり進んでいるのでは」
A「そういう事態は進んでおりません。出資完了に向けて全力で対応しています」
(しかしこの質問には経営陣の表情がこわばったそうです)

 

遅れ続けた出資

株主やニュースを聞いた人々の内の何割かが感じた嫌な予感が当たってしまいます。8月に入っても鴻海からの出資が得られず、シャープの経営再建が停滞してしまうのです。

当初、鴻海からの出資は6月末までに完了する予定でした。
シャープは2016年3月期に、巨額赤字の計上により債務超過に転落しています。
6月末の債務超過額は3月末より400億円以上増えて750億円となっていました。

しかし、鴻海からの出資さえ実現すればシャープの債務超過も解消されるはずでした。
出資されない理由はなんだったのでしょうか。

今回の買収により液晶事業の両社合算の売上やシェアが拡大することから、シャープと鴻海はアジアなどの各国に独占禁止法の審査と問題がないことの確認を求めていました。

日本や台湾などでの審査は終了したにも関わらず、中国当局による承認はどの事業が審査の焦点なのか明らかにされないまま待たされ続けたと言います。

6月末に出資されるはずが8月に入っても得られず、経営再建は停滞し、中国政府の独占禁止法の審査もいつ終わるかわからない状況だったそうです。

債務超過を解消できなければ金融機関からの融資条件にも影響しかねず、出資契約期限の10月5日に間に合わないかもしれない状況で、「8月末になると出資がない場合の対応を考える必要がある」と複数の銀行幹部からも指摘されていたそうです。

 

東証2部への指定替えと東証1部の条件「流通株式比率35%以上」

東証には「指定替え基準」があり、債務超過になった時点で東証1部から東証2部へ指定替えとなります。

東証1部に上場していたシャープの株式も8月1日付で東証2部に指定替えになると発表されました。

上場廃止になるのは2期連続債務超過になった場合ですので、予定通りに出資期限の今年の10月までに鴻海から約4000億円の出資が完了し来年3月末までに債務超過を解消できれば上場廃止の危機は脱することができます。

しかし東証1部に戻るためには「流通株式比率35%以上」という条件があります。
流通株式とは、大株主等以外が保有する株式のことです。
つまり、鴻海が66%以上の株式を保有している限り、シャープは東証1部に戻ってくることはできません。

 

「悪い卵しか産まない鳥はいらない」守られなかった口約束

シャープの買収を決めた台湾の鴻海が台湾・新北市の本社で株主総会を開きました。

そこで郭台銘会長などが、

「場所を替えても飼い主を替えても悪い卵しか産まない鳥はいらない」
「カットすべき人はカットする」

と発言しています。

シャープは従業員の維持を重視していたにも関わらず、鴻海主導で国内外7千人程度の人員削減や海外拠点を整理するリストラの可能性があることを認めたのです。

ある40代の男性社員は

「鴻海の幹部に『売り上げを生まないあなたたちは
いつでも転職してくれて構わない』などと言われる」
「鴻海の社員は無理難題を押し付け、退職に追い込んでくる」
という声もあるそうで、現在シャープでは希望退職を募集していないにも関わらず、50代前後の管理職層の辞職が増えているそうです。

「出資完了まではシャープは経営の独立性を保つ」
「鴻海の戴正呉副(タイ・セイゴ)総裁のシャープ社長就任も出資完了後」
という条件だったにも関わらず、出資完了前からシャープには鴻海側から多くの人間が送り込まれており、シャープ社員に公然と指示を飛ばしていたそうです。

 

ついに完了、鴻海からの出資

8月11日、ついにシャープは中国当局から鴻海からの出資の承認を受けたと発表しました。

そして鴻海は12日に3888億円の出資金を払い、シャープの議決権の66%を握り、親会社となりました。

高橋興三社長は12日付で退任し、鴻海の創業者である郭台銘会長の腹心であり日本語も堪能な戴正呉副総裁が新社長に就任。
取締役は9人のうち鴻海の指名者が6人を占めています。

シャープの今後は鴻海が握っています。
シャープの議決権の3分の2を保有していれば株主総会でどんな議案も可決することができますね。

 

鴻海精密工業の信賞必罰

企業の買収を結婚に例える人もいます。

文化が違うので、環境が違うのは当たり前です。

「家事は分担」「半年に一度は海外旅行」
と結婚前には甘い言葉もささやきますが、結婚後は現実に直面しそれは実現不可能だと悟ったり、そもそも相手側に条件を並べると結婚そのものが破談になってしまったりするでしょう。

鴻海精密工業側では「信賞必罰」、成果をあげた人に多くの報酬を、成果が上がらない場合には厳しい判断を、当たり前と言えば当たり前の制度を取り入れ、スタッフの人事を行って進めたようです。

やっぱり悪くなるには悪くなる理由が、業績回復には業績回復の理由があるんです。

最後に期待通りの言葉を。

「業績回復の角度がシャープでしょ」

(記載 谷 美輝)

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