「都知事選とロリポップの家入さん」 2014.02.11
【1】カンヌの広告大賞など
先月「ジャッジ!」という映画をみて来ました。
妻夫木さんが主演の映画で、広告に関わる人たちが背景なのですが、 かなり笑いました。
その中で実際にカンヌ広告祭で出ていたCMがあります。
「Toyota: Humanity Directed by Ne-o」
いい広告は、芸術性を感じますし、人の心に入るのがいい広告。 意外性を用いたり、なるほどと思わせたり。
広告は小さくてもキラリと光るものであれば、 遊びたい人は集まってくる。 格言です。
あとは
「リゲイン」 http://www.youtube.com/watch?v=CEv1Zh-R9T8 なんかは懐かしい。
ああ広告。
【2】WEBマーケティング4コマ漫画
■ 第85話 ランディングページ
■ 第84話 スマホハンディプリンタ
■ 第83話 危険なパスワード
「こんなネタも書いてほしい!」などあればお気軽に スタッフまでお声かけください。
【3】 都知事選とロリポップの家入さん
● 都知事選とロリポップの家入さん
東京都知事選挙、終わりましたね。
結果は予想通り、高齢層からの圧倒的な支持で 200万票超えの、元厚生労働相の舛添要一氏の 初当選という結果に終わりました。 テレビキャスターや元厚労相という経歴からくる 彼の知名度が一番の勝因なのではないでしょうか。
「東京の魅力を高めて世界一の都市にする」という公約を掲げています。 がんばってほしいと思います。
この都知事選で、注目している人物がいました。 家入一真氏です。いえいりさん、 家入レオさんとは身内ではありません。
今回の都知事選の立候補者の顔ぶれを年齢別にみると、 60代後半に舛添要一氏、宇都宮健児氏、田母神俊雄氏の3人。 他の候補者もほとんど55~74歳に集中していて老人ばかり。 その中で、家入一真氏は最年少の35歳という若さです。 都知事選出馬記者会見で「選挙や政治をうまく ハッキングしたい」と語った、ちょっと変わった人物でもあります。
これはIT企業に携わる人間として気になる言葉ですよね。 今回のメルマガはこの家入一真氏について語ってみます。
家入一真氏の生い立ち
高校の頃からひきこもりだったにも関わらず、 レンタルサーバーで有名なあの「ロリポップ」 を作りIT社長になった人物です。
ジャスダック市場最年少で上場の起業家でもあります。
彼の事業や政治思想にも反映されているので、 家入一真氏の生い立ちから紹介したいと思います。
ファミコンとミニ四駆が好きで、休み時間は 4コマ漫画ばかり書いていた小学生だったそうです。 中学時代、クラスのリーダーとケンカした結果、 友達が離れていき、高校1年で外に出られなくなり 半年ほどで学校を中退。 パソコンにのめり込み、パソコンのワープロソフト を使ったり、ダイアルアップで10万円もの請求書が 来て親に叱られたりしながら パソコン通信のNIFTY-Serveでチャット。 C言語を本で学び、初めて作った作品は 「ドットで描いた気持ち悪い顔が血を吐きながら アップになるスクリーンセイバー」 で当時は雑誌だった「Vector」に収録されたそうです。 山田かまちに憧れ、東京芸術大学を目指し、 学費を出してもらえる新聞奨学生となり 住み込みで朝と夕方に新聞配達し、 昼間は予備校で油絵の勉強。
しかし2年連続で落ち、その後、 父が交通事故にあい長期入院。 父の借金も発覚し、両親が離婚。 そのため働かざるを得なくなり、 小さなデザイン事務所に就職するが、 Web制作に興味を持ったためシステム会社に転職。
家で製作した個人サイトに描き貯めていた デザイン画をアップし、掲示板を設置。 2ちゃんねるにもハマり、中国初の2足歩行 ロボ「先行者」に関するジョークサイトや、 田代まさしが「Time」の表示を飾るコラ画像を UPし、2ちゃんねるで騒がれるのが愉快だったそうです。 そして、「ご近所さんを探せ!」で女子高生だった 今の奥さんと出会い、 ずっと「ICQ」で会話していたそうです。 NIFTY-ServeやVector、懐かしいですね。 当時のVectorは、今のようなWEBからのダウン ロードではなく、ROMが付属していましたよね。 「先行者」に「2ちゃんねる」「ご近所さんを探せ!」 「ICQ」……年代が同じなので、懐かしい単語ばかり。 親近感がわくと同時に、インターネットにドップリ 浸かっていたというのがよくわかります。
「インターネット」も「リアル」も、「趣味」も 「仕事」も、家入一真氏にとっては垣根が なかったのだという気がします。
ロリポップを作った家入一真氏
家入一真氏が起業家となった動機も、ちょっと変わっています。
22歳のころに結婚した家入一真氏は、会社勤めが嫌になり、 家族と一緒にゆっくり過ごせる在宅の仕事をしようと、 起業を思い立ったそうです。
「うちの嫁も中学の頃からホームページを持っていたし、 若い女性がどんどんホームページを作る時代になる」
「若い女の子向けにレンタルサーバーを提供すれば絶対にウケる」
と考え、今までのような地味なものではない、 女性向けのポップで安価なホスティング サービス「ロリポップ」を始めたそうです。
このロリポップのコンセプトをいくつかあげてみると、
「若い女性向け」
「可愛いけど気持ち悪い」
「おこづかいで使えるレンタルサーバー」
「身近な女性に気に入られるものを」
これらのコンセプトへの取り組み方が面白いなあ! と思ったので、詳しく説明していきます。
・「若い女性向け」
デザインやキャラクター、ネーミングにこだわり、 babypink.jpやcandypop.jpのような、可愛い ドメインから好きなものを選べるようにしたところ、 とても好評で、選べるドメインも今ではもっと増えたそうです。
・「可愛いけど気持ち悪い」
ちょっと気持ち悪いものがカワイイと言われて いた当時の風潮にあわせて、ロリポおじさんと いうキモカワイイキャラをつくり、デザインも それに合わせたそうです。
「ナウでヤングなロリポップ!」という キャッチフレーズも、今までにないものを つくるのだからやりすぎなぐらいがちょうどいい! と思ってつけたそうです。
(正直、ナウでヤングな……はどうかと 思っていたのですが、こういう意図があったのですね)
・「おこづかいで使えるレンタルサーバー」
女性を呼び込むために、女性や学生は初期費用 を半額の1,575円にしたそうです。
・「身近な女性に気に入られるものを」
エラーページやバナーには、会ったこともない インターネットで知り合った女の子に描いて もらったかわいらしいイラストを使っていたそうです。
嫁やこの女の子のような、そういった身近な人たち を思い浮かべ、彼女らに気に入られるような サービスを作ろうという感覚を、今でも大事にしているそうです。 「ロリポップ」は当初「鯖サーバー」 という名前にしようとしていたそうですが 「こんなの誰が使うのよ」と嫁に一蹴されたそうです。 この嫁の助言がなければ、ロリポップは、 生まれては消えていった当時の他のレンタル サーバーのようになっていたかもしれませんね。
「ロリポップ」は、スタート時から安さと デザインが口コミで広まり、ユーザー数も増え続け、 1カ月目から黒字が出たそうですから、大成功だったようです。 ターゲットとなる若い女の子やその気持ちが わかる妻が身近にいたのがよかったのでしょうね。 その彼女たちとの出会いもインターネットを 使った結果だというのが興味深いところです。
大きくなる会社
ユーザーが増えるにつれ、パートを雇い社員を増やし、 会社は大きくなっていきました。
2003年に有限会社化し社名を「paperboy&co.」に変更。 初心を忘れないために「新聞配達少年」という名前にし、 ティファニーみたいに“&co.”を付けてオシャレにしたそうです。 2009年4月に株式会社「partycompany Inc.」を新たに立ち上げます。
今までのようなITではなく、カフェやレストラン などの飲食店の会社でした。 何故いきなり飲食なのかと意外に感じますが、 家入一真氏にとってはwebもカフェも「場所を作る」 というテーマの上では何の違いもないのだそうです。
家入一真氏の都知事選出馬
家入一真氏が都知事選に出馬したきっかけも変わっていて、
「1000リツイートされたら出馬する」というTwitterでの一言だったそうです。
結果は、たった30分で1000リツイート達成。 一旦は落ち着き出馬しない方向だったのですが、 1か月たった事前審査の締め切り1日前に、 やっぱり出ようと立候補を決意したそうです。 堀江貴文さんに説得されたり、 供託金を貸してもらったりしたそうです。 家入一真氏は以下の3点を政策にあげていました。
(1)「居場所がある街・東京」多様な人が多様に 生きていくための場所を作りたい
(2)「遊べる街・東京」仕事や遊びが楽しめる
(3)「政治に参加したくなる街・東京」ネットを 使って政治をもっと身近に
イジメで学校にいけなくなった子や、 就活を途中で辞めた子、そういった子ども たちの居場所をつくる活動も実際にしているそうです。 「政治に参加したくなる街・東京」という政策には、 政治家のものになってしまっている選挙や政治を、 もっと身近なものにして取り戻したいという意思が感じられます。
ひきこもりになり、インターネットに居場所を求め、 そこで人とつながり、エンドユーザーから起業家 になった家入一真氏らしい政策だと思います。 家入一真氏は選挙活動について、こう語っていました。
「僕はお金がないので街頭演説とかできないん だけど、24時間ネットで生放送し続けようかと思ってる」
「ツイキャス、ニコ生、ツイッター、 Google docsなど、既存の仕組みを使う」
「『僕らの公約』みたいなハッシュタグつくって、 みんなの意見をどんどんもらって、ブラッシュ アップしていって、最終的にみんなで政策をつくる」
こういった、Twitterや生放送といったインター ネットのサービスをフル活用して議論を進めたり、 選挙活動したり、選挙や政治の既存のシステムを 撹乱することで新しい動きをつくることを、 「民主主義2.0」 「選挙や政治をハッキングするつもり」 と、家入一真氏は表現していました。
まとめ
結果は、88,936票、得票率1.8%となり、 家入一真氏が当選することはありませんでした。
しかし、日本でも、2013年7月の参議院選挙から、 ブログやSNSなどを選挙運動に利用するインター ネット選挙運動が一部解禁されています。 候補者も有権者もまだ馴染みがないためか、 あまり活用できてはいませんでしたが、 これからは、もっとどんどん活用されるようになるでしょう。 そうなれば、この家入一真氏がやろうとしていたような 事も実現され、それに伴い若い世代の投票率があがれば、 今の選挙や政治も変わっていくでしょう。
ただ、そんなにすぐには変わらないですよね。 いろいろ変化は選挙などはリスク考えると、難しいことは たくさんありますし、正直どんどん変わることが よくないケースもたくさんあります。
行政であったり、大きな組織の場合には。 ご商売上で言えば市場が変わるので変化についていかないと 絶滅するのでどんどん変わりますし、逆にイノベーションの名の もとで変化をつくることが大事なことがあります。 けど、ロリポップの家入さんのように、 やっぱり新しい変化はいいもの。 変化を愉しむくらいにやらないとやってられませんし、 変化があるからいい、という気もします。 組織の変化、事業の変化、そして広告の変化に、 webの変化。
スマホばかり触っていてタブレットを持つと、 「大きいな!」 と違和感感じるのが普通の感覚。
そんないい変化を作りませんか。
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(次回につづく)