『SEOマーケティングの未来を読む vol.170』
「うるう秒とうるう年、臆病について。 」
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【2】 WEBマーケティング4コマ漫画 毎週金曜日更新
■ 第282話
天国への入り口
いかに、人に情景が思い浮かばせるか、広告では大切です。
■ 第281話
パスワード
パスワードの管理は大変ですが、厳重に管理していきたいですね。
■ 280話
バイアス
ユーザー視点を考えてのマーケティングは大切です
うるう秒とうるう年、臆病について。
1日の長さは「24時間」です。しかし、2015年7月1日は「24時間1秒」になります。
より詳しく言うと、7月1日の午前8時59分59秒から午前9時に切り替わるその瞬間に、「8時59分60秒」、
つまり「閏秒(うるう秒)」と呼ばれる1秒が挿入されることで、通常より1日が長くなってしまうのです。
この「閏秒」とは一体なんなのでしょうか?
「閏年(うるう年)」は、みなさんもよく知っていますよね。
「太陽の運行」と「暦」のズレをなおすために、4年に一度、28日までしかない2月が29日までになり、1年が366日になる年のことです。
それと同じように「地球の自転」と「世界の標準時刻」」のズレをなおすために生み出されたのが閏秒です。
地球の回転の観測を行い、世界時を決定している、パリに本部を置く国際機関、「国際地球回転および基準座標系事業(IERS)」。
この「IERS」が2015年の6月の最後に「正の閏秒」となる1秒を追加すると発表し、その決定を受け、日本時間の基準となる日本標準時(JST)を決定し維持している
独立行政法人「情報通信研究機構(NICT)」
が国際協定に沿って日本で今年7月1日に「閏秒」を実施すると発表したのです。
1972年7月1日に初めて、閏秒による世界の標準時刻の調整が行われました。前回調整が行われたのは2012年で、今年2015年行われる調整は26回目に当たります。
かつて「2000年問題」「Y2K問題」「ミレニアム・バグ」と呼ばれた問題がありました。
昔のプログラムでは日付を扱う際、年数の下2桁だけで処理していたため、2000年には様々なプログラムにおいてトラブルや誤作動が発生する可能性があると騒がれました。
結果はさほど大きな混乱も起きずに、杞憂に終わりましたが。
しかし、現在は当時よりさらにインターネットやパソコン、スマートフォンが普及しています。
1秒の狂いも許さない正確無比を旨とするコンピューターや精密機器にとって、閏秒の1秒が障害やバグを引き起こしはしないのでしょうか。
今回のメルマガは、この閏秒を取り上げてみたいと思います。
閏秒とは?「2つの時計」をあわせるための調整
世界の時間は「世界時」「国際原子時」という2つによって決められています。
「世界時」は、地球の自転によって決められます。
「国際原子時」は、非常に正確な原子時計によって決められます。
そもそも「1日」や「1秒」の長さは、どのように決められたのでしょうか?
昔、地球の自転を基準に「1日」の長さが決められました。
そして、
その24分の1を「1時間」に。
その60分の1を「1分」に。
その60分の1を「1秒」に。
このようにして、時間は決められました。
しかし技術は進歩し、原子時計によってより正確な時間が測定できるようになると、あることがわかったのです。
「地球の回転速度にはムラがあり、一定速度で回転していない」という事実です。
たとえば西暦1990年頃の地球は、原子時計を基準にした1日より、約1000分の2秒長くかかって1回転していたそうです。
速度にムラのある地球の自転によって決められた「世界時」。
地球の自転よりも正確な「国際原子時」。
この2つの時間にズレが生じてくるのは必然だったのです。
原子時計と比較しながら地球の自転速度を観測し、「世界時」と「国際原子時」の時刻の差がプラスマイナス0.9秒の範囲に入るように調整するため挿入されるものが、閏秒なのです。
ちなみに、地球の自転速度の変化を長期にわたって予測することはできないため、4年に1回ある閏年とは違って、今後の閏秒の実施時期を決めることはできないそうです。
頻発していた「閏秒バグ」
閏秒は導入された1972年から現在までに25回実施されています。
前回実施されたのは、2012年7月1日です。
その前回の閏秒の実施の際、Linux OSやJavaといったインターネットの基盤をなすソフトウェアプラットフォームの一部が、その追加された1秒に対処できなかったために、掲示板などの一部のWebサービスやサーバにトラブルや障害が発生しました。
これは「閏秒バグ」と呼ばれ、話題になりました。
多くのコンピューターは国際原子時と同期されています。
その同期が、閏秒により上手く行かなかったためです。
日本で起きた「閏秒バグ」
閏秒を原因とするトラブルが世界中で発生しました。
日本も同様でした。
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の代名詞だった「mixi」では、7月1日午前9時から約4時間にわたってシステム障害が発生し、つながりにくくなったそうです。
レンタルサーバや仮想サーバで有名なさくらインターネットでは、2つのトラブルがあったそうです。
1つ目は、24時間前に閏秒挿入の実施予告を受け取ったLinuxベースのシステムが動作に異常を起こし、再起動が必要になったというもの。
2つ目は、閏秒挿入後にLinuxカーネルの一部のバージョンでCPU使用率が上昇したというもの。
このトラブルのために、該当するシステムを利用していた仮想サーバにも影響があったそうです。
他にもいくつかのウェブサイトでトラブルが起こりましたが、サーバの時刻が突然ずれる程度の軽微なものであり、重大なシステムトラブルまでは発生しませんでした。
また、現在では既に該当するLinuxカーネルの修正が行われているそうです。前回の閏秒の実施は、幸運なことにほとんどの人の生活では気づかれないまま、過ぎ去りました。
「閏秒」の廃止議論
前回の閏秒の実施では重大なトラブルは起こりませんでした。
しかし、閏秒がいつかそれを引き起こす可能性を孕んでいることには変わりません。
それに閏秒の修正のためのコストは0ではありませんし、修正作業中にミスが発生すれば、どれほどの悪影響があるかもわかりません。
こうしたコストがかかりトラブルの元凶ともなる閏秒には、廃止を求める声も多く存在しています。
閏秒はシステムを破壊し時間を無駄にするとしてアメリカが廃止を呼びかける一方で、1847年から使用されているグリニッジ時に影響が及ぶとしてイギリスは廃止に反対しています。
かつては全世界共通の時刻の基準として使われ、イギリスで生まれたのがグリニッジ時ですから、イギリスが反対するのも頷ける話です。
「世界無線通信会議」が11月にスイスのジュネーブで開催され、この閏秒を廃止するかどうかが議論されるそうです。
廃止するのか、維持するのか、どちらがいいのでしょうね。
閏秒を廃止した場合、地球の自転と時刻のズレどんどん大きくなっていき、数万年後の未来ではお昼12時に夕焼けが見えたりするのかもしれません。
各機関・企業の閏秒対策
ちなみに、時刻に関する機関は閏秒に対して、以下の様な対策をとっていたそうです。
・「情報通信研究機構(NICT)」の日本標準時提供サービスの場合「8:59:60」を表示。
・NTT東日本および西日本(2009年)の時報サービスの場合。
午前8時58分20秒から午前9時ジャストまでの100秒間、時報サービスの秒音をそれぞれ100分の1秒ずつ長くし、合計で時刻を1秒遅らせる。
・「ひかり電話」の時報サービスの場合。午前9時ジャストのポーンという通知音を2回鳴らし調整。
1秒のズレの帳尻を合わせるために、色々なやり方をしているんだなと感じさせますね。
パソコンやスマートフォンでは閏秒はどう対処される?
電波時計は標準電波で、ネットワークに接続されたパソコンやサーバ、スマートフォン端末などはNTP(Network Time Protocol)サービスによって時刻調整を行っています。
標準電波もNTPも、「情報通信研究機構(NICT)」が管理しています。
標準電波とNTPは特殊な信号を出すことによって、7月1日の閏秒による時刻調整時に対応します。
ほとんどの場合、これによって電波時計やパソコンの内部時計、スマートフォンの時刻は自動的に補正されるそうです。
誰もが持っているスマートフォンですが、今年実施される閏秒に対して、特に何もすることはなさそうですね。
Googleのとった閏秒対策
その中で、Googleは独自の、一風変わった解決策を生み出していたようです。
Googleが採用したのは1秒を時間枠内に分散させる「Leap Smear」というテクニック。
閏秒が実施される前から、NTP(Network Time Protocol)サーバのアップデートの度にミリ秒を追加していき、最終的には1秒まで増やすというものです。
結果、閏秒が起こったことなど意識されずに、サーバはすべて通常通りの運転が続けられたそうです。
leapとは「跳躍する」といった意味で、閏年はa leap year、閏秒はa leap secondと呼ばれています。
smearとは「徹底的にやっつける」といった意味です。
「Leap Smear」とはさしずめ「閏退治」といった意味でしょうか。
機械式時計の閏秒対策、アナログの対応
通信網と切り離された、昔ながらの機械式時計の場合。
日本で最も有名な機械式時計の一つ、札幌市時計台では、毎日の保守点検で日本の標準時に合わせられていて、閏秒への対策も特に取られてはいないそうです。
毎日の保守点検で時間を合わせているのだから、それで特に問題はおこらないのでしょうね。
こういう時、アナログの長所を思い出して、なんだか懐かしいようなホッとするような気持ちになります。
「まとめ
IT業界では閏秒はさほど問題として取り上げられてはいません。
と言うより、閏秒の実施でインターネットやスマートフォンに、どのようなトラブルが発生するのかほとんど予想できないというのが本当のところのようです。
しかし、前回の閏秒の実施でもトラブルは実際に発生していますし、2015年の閏秒の実施で影響が出ないとは言い切れません。
たった1秒の閏秒が、ビジネスに痛手を与える可能性も0ではありません。
トラブルで信用を失うわけにはいきませんので、気をつけるに越したことはないと思います。
(記載 谷 美輝)