落合博満さんが社会人野球の監督に向けて書かれているちょっと変わった本ですが、本質をずばりと確信をついていてさすが落合さんと納得だらけの内容でした。社会人野球はそれほど着目されないのですが、いざ監督になると勝利を目指して当然采配をふるい、練習に試合前や試合後の選手への指導もするわけなので、「優勝」を勝ち取るための考え方が随所に出ています。
野球という本質の中で言うといろんな部分があるのですが、この本の中に「無死2塁3塁で打者に和田、その和田が四球を選んだ瞬間に落合さんが「あちゃー」と思ったエピソード」が出てきます。和田選手は低めのボールをひっかけて内野ゴロをよく打つのですが、ここは内野ゴロで1点確実に取れる想定ケースだったのに、塁を貯める方がチャンスに結びつくとしぶとくボールを選んでしまったので無死満塁になった話です。結果としてはこの後凡退に倒れたので0点だったそうですが、野球は1点でも多く取ればいいゲームなので確実にここで1点と思ってたのに、違ったので「あちゃー」だったそうです。
たとえそれがチャンス広げようとも1点のほうが大きいわけで。
この感覚や理解は最後の最後あたりで、特に緊張した場面や緊迫した場面で多く出ます。仕事ごとで言えば顧客交渉や折衝時には思想や視点の違いに究極の目的部分共有できないといい結果にならないことは多々あります。こういった考えは随所に落合さんも話するからこそあれだけの強いチームになったのだろうなと、しみじみ思います。後は日本シリーズで完全試合をしていた山井投手に交代を告げたのも、優勝することというぶれない目的と「日頃から完全試合しようとしまいと玉数考えて最後は岩瀬を使う」など決まりごとあったからあれも当然、となったはずだと。
これ読んで気付いたのですが、敵チームからすると戦いずらいチームです、ライバルになると本当に厄介で面倒なチーム。だなと。
ファンを魅了するにはファン感謝デーではなく優勝すること、チームの裏方も2軍もコーチも全員の最大公約数的幸せは「優勝」、野球の本質と書いてますが仕事の本質に近いです。優勝するから楽しくなる、またこの勝利の美酒をみんなで乾杯したくなる、これです。落合さんの本はいつも本質であって面白い。